東京高等裁判所 平成3年(行ケ)92号 判決
1 本件に関する特許庁における手続の経緯、審決の理由の要点、本願商標の構成、指定商品及び登録出願日がいずれも原告主張のとおりであることは当事者間に争いがなく、引用商標の構成、指定商品、登録出願日、設定登録日及びその更新登録日がいずれも審決の理由の要点2に記載のとおりであることは当事者間に明らかに争いがないところである。
2 別紙のとおりの構成からなる本願商標は、全体としては英文字一二文字からなるものであるが、前半の「CLASSIC」の七文字と後半の「BLACK」の五文字とは一文字程度の間隔をあけて左右に分離、配置されている。そして、前半の「CLASSIC」の文字は「古典的な、伝統的な」等を意味する英語として、後半の「BLACK」の文字は「黒、黒色」等を意味する英語として、いずれも一般に親しまれているものであるところ、これら両語が結合した結果、全体として独自の意味を持つ熟語若しくは複合語を形成するとみるべき格別の事情は存在しない。
更に、これら両語を本願商標の指定商品である「シヤープペンシル、万年筆、ボールペン、フエルトペン、サインペン」との関係でみると、「BLACK」の語は、具体的な色彩を直截的に表現し、これら指定商品の色彩(品質)を表示するものとして普通に使用されているものであると認められるのに対し、「CLASSIC」の語は、上記指定商品の品質若しくは形状を具体的に直感させるものではなく、したがつて、指定商品の品質若しくは形状を表示するものとして普通に使用されているとまでは認められない。なお、成立に争いのない甲第四号証(「カタログ」抜粋・日本輸入筆記具協会発行)によれば、上記指定商品である万年筆、ボールペン及びペンシルのカタログにおいて、「クラシツクシリーズ」の見出しのもとに万年筆、ボールペン及びペンシルの写真が示され、これら写真の下部に「クラシツク黒」、「クラシツク ボールペン 黒」、「クラシツク ペンシル 黒」、「クラシツク 赤」、「クラシツク ボールペン 赤」、「クラシツク ペンシル 赤」等の表示が記載され、また、万年筆、ボールペン及びペンシルの写真が示された下部に「♯500 14金ペン先 グリーンのたて縞 クラシツクタイプ \25,000」、「K500 ボールペン グリーンのたて縞 クラシツクタイプ \8,000」等の表示が記載されていることが認められるところ、これらの記載は「クラシツク」なる語によつて商品の形状の特徴を表現しようとするものであると認めることはできるが、これら「クラシツク」なる語によつて表現される上記カタログにおける万年筆、ボールペン、ペンシル等の品質若しくは形状も、「クラシツク」なる語によつて直截的、一義的に定まるものとは認められないから、甲第四号証によるも、「CLASSIC」の語は指定商品の品質若しくは形状を表示するものとして普通に使用されているとまでは認められないとする前記認定を覆し得るものではなく、いずれも成立に争いのない甲第七号証(「男の一流品大図鑑」・株式会社講談社平成二年一一月二六日発行)及び同第八号証(「世界の一流品大図鑑」・株式会社講談社平成三年五月二三日発行)も、「クラシツク」なる語が商品の品質若しくは形状の特徴を抽象的に表現することを示すに止まり、これらによつて前記認定を覆し得るものではない。そして、いずれも成立に争いのない甲第二、第三号証及び同第五、第六号証が示す審決例は、いずれも本件とは事案を異にし、これらを本件に採用することはできない。
以上によれば、本願商標に接する取引者、需要者は、構成中の「BLACK」の文字は指定商品の色彩を表したものと認識するの止まり、構成中の「CLASSIC」の文字を自他商品の識別標識と把握し、その取り引きに当たることも多いものと認めるのが相当である。
3 してみると、本願商標は、その構成文字全体に相応して、「クラシツクブラツク」の称呼を生ずる他、自他商品の識別機能を有しない「BLACK」の部分が省略されて、「CLASSIC」の部分に相応する「クラシツク」なる称呼をも生ずるものであると認められるところ、前記のとおりの構成からなる引用商標が、その構成文字に相応して、「クラシツク」の称呼を生ずるものであることは明らかであるから、本願商標と引用商標とは、称呼を共通にする類似の商標であるということができ、かつ、本願商標の指定商品は明らかに引用商標の指定商品に包含されるものであるから、本願商標は商標法四条一項一一号に該当し登録することができない。
審決は、以上の判示と論旨を同じくするものであり、原告主張の違法は存在しない。
4 よつて、本件審決の違法を理由にその取り消しを求める原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却する。
〔編注1〕本件の特許庁における手続の経緯及び審決の理由の要点は左のとおりである。
1 特許庁における手続の経緯
商標登録出願人 原告
出願日 昭和五六年五月二一日(昭和五六年商標登録願第四二六四四号)、(一九八〇年一一月二八日アメリカ合衆国出願に基づく優先権主張)
本願商標 欧文字「CLASSIC BLACK」を書してなる商標(別紙のとおり)
指定商品 第二五類「鉛筆類その他本類に属する商品」(その後、「シヤープペンシル、万年筆、ボールペン、フエルトペン、サインペン」に補正。)
拒絶査定 昭和五八年五月二五日
審判請求 同年九月二二日(昭和五八年審判第一九八五一号事件)
請求不成立審決 平成二年一一月一日
2 審決の理由の要点
(1) 本願商標の構成、指定商品及びその登録出願日は、前項記載のとおりである。
(2) 当審において新たに本願商標の拒絶理由に引用した登録第九七二四九五号商標(以下、「引用商標」という。)は、「CLASSIC」の欧文字を書してなり、第二五類「紙類、文房具類」を指定商品として、昭和四四年七月九日に登録出願、同四七年七月二〇日に登録、その後、同五七年九月二二日に商標権存続期間の更新登録がなされているものである。
(3) 本願商標は、前記した構成のとおり、「CLASSIC」と「BLACK」の文字よりなるところ、該文字が不可分一体の成語を形成しているといつたような格別の事由を見い出せない。
そして、前半の「CLASSIC」の文字は、「古典的な、伝統的な」等を意味する英語として日常親しまれているものではあるが、これが指定商品との関係において、特定の商品あるいは特定の商品の品質を表わすものとして、普通に使用されているものであることを認めるに足りる資料を見出せないものであるのに対し、後半の「BLACK」の文字は、「黒、黒色」等を意味する語として一般に親しまれているばかりでなく、指定商品との関係においては、色彩(品質)を表示するためのものとして普通に使用されているものである。そうすると、本願商標は、その構成中の「CLASSIC」の文字が、それ自体独立して自他商品の識別標識としての機能を果たすものといわざるを得ない。
してみれば、本願商標は、その構成文字に相応して、「クラシツクブラツク」の一連の称呼を生ずる他に、単に「クラシツク」の称呼をも生ずるものといわなければならない。
他方、引用商標は、構成文字に相応して、「クラシツク」の称呼を生ずること明らかである。
そうすると、本願商標と引用商標とは、外観、観念の類否について論ずるまでもなく、「クラシツク」の称呼を共通にする類似の商標であつて、かつ、本願商標の指定商品は引用商標の指定商品に包含されるものであるから、結局、本願商標は商標法四条一項11号に該当し登録することができない。
〔編注2〕本件における別紙は左のとおりである。
別紙
本願商標登録
<省略>